先日Buzzap!でお伝えした超高速通信を実現する上、LTEネットワークの負荷を劇的に引き下げられる「ミリ波(60GHz帯)」を用いた実演デモをKDDI研究所が公開しました。
最近普及してきた最大1Gbpsの戸建て向け光回線をはるかに上回る実測値を叩き出したほか、実用性を向上させるためにさまざまなアプローチが取り入れられています。詳細は以下から。
ワイヤレスジャパン2015のKDDI研究所ブース。
まずは技術の概要。4K/8K動画といった大容量コンテンツが行き交うことになるであろう近い将来を担う第5世代(5G)携帯電話ではミリ波を用いた「スポットネットワーク」と呼ばれる1Gbps以上の超高速・極小エリアのネットワークが活用される見通しです。
スポットネットワークではユーザーの利用状況を分析し、コンテンツを基地局側に先回りしてダウンロードする仕組みを採用。従来の端末とサーバーが基地局を介して通信する方式では、サーバー側のレスポンスがボトルネックになりますが、これなら問題ありません。
これがミリ波対応基地局。
Xperia Z3とほぼ同じサイズです。
カバーできるエリアはこの2つのブロックの間のみ。ミリ波はWi-FiやLTE、WiMAXなどよりも圧倒的に高い周波数を採用しているため、電波の直進性が高く、回り込むといったことができないことから、どうしてもエリアが狭くなってしまうわけです。
そしてこちらがミリ波対応に手を加えられたAndroidスマートフォン。
Androidスマホ、バッテリー、ミリ波通信モジュールの三段構成です。
ではさっそく実際に通信してみましょう。今回はWi-Fiとミリ波を組み合わせています。
実験結果。Wi-Fiが実効速度5Mbps弱であったのに対し、ミリ波では500倍を優に上回る2.7Gbps程度を記録。実に毎秒330MB、3秒もエリア内にいれば1GBも伝送できることから、大容量コンテンツを一瞬で伝送するのに最適です。
ちなみに今回LTEではなくWi-Fiを用いたのは、スマホの画面をChromecastでミラーリングする必要があったため。LTE回線とミリ波を組み合わせることも可能。
エリアが狭く、通常の携帯電話基地局のように整備するのは難しいミリ波基地局ですが、1~2秒でもそのエリアにいれば超高速通信の恩恵を受けられるため、KDDIでは駅の改札や商業施設のエレベーター・エスカレーター乗降口など、多くの人が必ず通る場所に設置することを検討しています。
さらにブースでは、実際にミリ波を体験できるスペースも。
なんとレシーバーの間を手で遮っただけで、電波が減衰してしまうほど遮蔽物に弱いミリ波。
当然このような電車の座席などの場合、後ろの席では電波が遮られてしまうおそれがあるわけです。
しかしアクセスポイントを車両上部に設置し、10センチ四方のアルミ板をリフレクター(反射板)として用いれば……
車両後部の座席でもミリ波の恩恵を受けられます。
このようにKDDIは反射を用いたエリアの構築も視野に入れて研究中。スマホ向けのリッチコンテンツ普及でネットワークがどんどん混雑していくことを考えると、そう遠くないうちに実用化されるかもしれません。