ジャーナリストによる非政府組織「国境なき記者団」が2002年から発表している「報道の自由度ランキング」において、日本が過去最低記録を更新しました。
来月開催される「伊勢志摩サミット」に参加する主要先進国ではもちろん最低クラス、極東では韓国や台湾をも下回り、「中国・北朝鮮よりはマシ」という、悲惨な結果となっています。詳細は以下から。
◆主要先進国で最低水準に落ち込んだ日本の「報道の自由度」
国境なき記者団が公開した2016年版「報道の自由度ランキング」。日本のランキングが昨年(61位)を大きく下回る72位に落ち込む、過去最悪の数字となってしまいました。
72位という数字は、台湾(51位、前年50位)や韓国(70位、前年60位)を下回るもので、G7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)ではイタリア(77位、前年73位)に迫るもの。
テロの脅威やナショナリズムの台頭、政治の強権化、政治的影響力もある富豪らによるメディア買収などによって、報道の自由と独立性に対する影響が強まった結果、他の先進国でもドイツが16位(前年12位)、カナダは18位(前年8位)、イギリスは38位(前年34位)、アメリカは41位(前年49位)、フランスは45位(前年38位)……と順位を下げていますが、日本はいずれの国にも遠く及びません。
日本の2002~2014年までの順位の移り変わりはこんな感じ。第一次安倍政権下の2006年に30位台から50位台に、第二次安倍政権下の2012年以降も再び50位台へと急落したことを考えると、安倍政権はメディアを萎縮させる傾向にあることが分かります。
◆下がり続ける報道の自由度、取り巻く環境はさらに悪化
なお、今年に入ってからもメディアを取り巻く環境は厳しく、2月にはテレビ局への電波割り当て権限を持つ高市早苗総務大臣が「政治的公平性を欠いた場合、時の政権の大臣が電波停止を命じる可能性がある」と発言。
政権の中枢にいる大臣が政権に批判的・肯定的なメディアを「公平」に裁くことはどう考えても困難な上、電波を盾にされているため、メディアは政権の意向を意識した報道を余儀なくされるわけです。
また、3月には「報道ステーション」の古舘伊知郎氏、「NEWS23」の岸井成格氏、「クローズアップ現代」の国谷裕子さんといった、政権に肯定的でない姿勢とされるキャスターやコメンテーターが今年3月に各番組から一斉に降板。
かねてから安倍総理は幻冬舎の見城徹社長を通じて新聞社やテレビ局などの大手メディア幹部との会食を頻繁に実施してきましたが、看板キャスターの降板はその結果と考えるべきなのかもしれません。
徳永みちおさん: “第四の権力と言われるメディアのこの腐りようは何なんだ! 権力の犬と化した日本の大手メディア。
さらに前述の高市早苗総務大臣の発言に絡めて、「放送法遵守を求める視聴者の会」という団体が「メディアの偏向報道を見逃さない」などとして、NEWS23の岸井成格氏など、特定の番組やジャーナリストを狙い撃つ意見広告を新聞などに掲載。
実質的なメディアに対する圧力団体と化しているわけですが、同団体の事務局長・小川榮太郎氏は安倍政権をたたえる「約束の日 安倍晋三試論」を出版した、安倍総理と懇意な人物。つまり同団体は政権に不都合な報道を『偏向だ』と攻撃する、安倍総理の応援団に過ぎないわけです。
このように、あらゆる側面から萎縮せざるを得ない状況に追い込まれている日本のメディア。これらの状況を鑑みると、歩道の自由度ランキングが類を見ない水準にまで下がっている背景が分かるのではないでしょうか。
ちなみに日本政府は昨年11月に国連の「表現の自由に関する特別報告者」の訪日をキャンセル。もはや対外的に取り繕う姿勢すら見せなくなっているのが現状です。