5年連続純増1位を記録し、絶好調に思えるソフトバンクモバイルですが、その数字のカラクリが明らかになりました。
純増の背景には大手メディアが「水増し」と呼ぶ販売手法があり、ユーザーが思わぬ落とし穴に陥るケースもあるようです。詳細は以下から。
◆純増数1位をアピールするソフトバンク
ソフトバンクが2013年10月31日に行った2013年第2四半期決算発表会のプレゼンテーション資料では、同社が2007年から純増数1位の携帯電話会社であることをしきりにアピールしています。
携帯電話契約数が日本の総人口を超えても純増数を争うのは不思議な気もしますが、かねてから携帯電話会社の勢いを表す指標とみなされてきた経緯があるため、現代もなお携帯各社は非常にこだわるわけです。
◆純増を後押ししているものは一体何なのか
いくらiPhoneをいち早く売り出し、家電量販店で一番目に付くスペースを確保するように動いているソフトバンクとはいえ、KDDIやNTTドコモがiPhoneを取り扱い始めても純増1位をキープしているというのは驚くべきところ。しかし携帯電話販売店のデータを見ると、面白いことが分かってきました。
今回紐解くのは東名阪を中心に全国各地で「ソフトバンクショップ」を運営するベルパークが発表している販売実績。同社はソフトバンクの純増数のうち、15%前後を獲得している独立系携帯電話販売代理店です。
・相次いで「基本料2年間0円」の施策を導入した2011年
ソフトバンクが契約者の上積みに用いていた8円ケータイに代わる新たな方法を採用したのは2011年7月のこと。
子ども向けに機能を絞った「みまもりケータイ」を25ヶ月間基本使用料0円で利用できる「みまもりケータイ基本料無料キャンペーン」を導入することで、今まで携帯電話新規販売台数の数%を担うのみだった同モデルを一気に10%以上に引き上げました。
なお、みまもりケータイのような販売手法について、週刊ダイヤモンドやケータイWatchといった大手メディアでは「水増し」と表現されています。
さらにKDDIがiPhone 4Sの販売にこぎつけたことを受け、ソフトバンクは同年12月から「iPhone家族無料キャンペーン(現:スマホファミリー割)」を展開。
iPhone 4Sに機種変更したユーザーが今まで使っていたiPhone 4を家族が新規契約で利用する場合、月額0円から利用できるようになる「無料SIM」を発行するという同キャンペーンによって、12月の新規販売数の実に15%が無料SIMとみまもりケータイになりました。
・無料SIMはさらに拡大、PhotoVisionも無料に
2012年4月には新たに通信機能付きフォトフレーム「PhotoVision」が25ヶ月間無料の「フォトビジョン基本料無料プログラム」を導入。
無料SIMの新規契約数はiPhone 5が発売された9月以降に爆増し、2012年度の新規販売台数約50万台のうち、3割にあたる約17万台が無料SIM、みまもりケータイ、PhotoVisionに。
・どんどん拡大する無料SIM
2013年になるとテレビ機能付きフォトフレーム「PhotoVision TV」が本体無料・2年間無料になる「ホワイト学割 with 家族 2013」が功を奏し、3月には無料SIM、みまもりケータイ、PhotoVisionが新規販売台数の5割を占めるという事態に。
春商戦後はみまもりケータイやPhotoVisionを使った契約数上積みが収束しますが、代わりに無料SIMの発行枚数がどんどん拡大。2012年は1000~2000枚の月が大半でしたが、2013年はコンスタントに毎月5000枚以上を発行しており、1万枚の大台に乗る月も相次いでいます。
1~11月の新規販売台数全体でカウントしても、無料SIM、みまもりケータイ、PhotoVisionが昨年を上回る4割に達していますが、新規販売台数自体は2012年とほぼ変わらないため、言い換えればソフトバンクでは純増数No.1をアピールする一方で、純粋な携帯電話の新規販売自体は落ち込んでいることになるわけです。
◆「基本料無料」の契約者水増しアイテム、ユーザーには弊害も
このように基本使用料無料を武器にした「携帯電話以外」での契約者上積みが年を追うごとに激しくなっているソフトバンク。NTTドコモやKDDIも子ども向け携帯電話などで追従しつつあるものの、ここまで徹底的にやっているのは同社だけです。
しかしショップでの契約時に「無料」という言葉で契約を薦められる「スマホファミリー割」を用いた無料SIMや25ヶ月間基本使用料無料のみまもりケータイ、PhotoVisionといったアイテムですが、すべてれっきとした1回線分の契約であることを忘れてはいけません。
いずれも2年契約(自動更新、中途解約時は9975円ないし9980円が契約解除料として発生)のプランであるため、「特に使わないけれど無料ならいいや」といった軽い気持ちで契約してしまうと、中途解約時に思わぬ高額請求に悩まされるほか、メイン回線を継続して使う場合でも、これらの契約を2年後に解除し忘れると自動更新され、さらに毎月基本使用料が発生するわけです。
「少ないコストで契約者を上積みでき、さらに契約解除料を複数回線分重ねることで中途解約防止にもつながる」という手法はなかなかよくできていると思われますが、必ずしもユーザーにメリットがあるとは限らないため、「無料」という言葉には気を付ける必要があるのではないでしょうか。
(関連リンク、拡大画像を参照できるオリジナルの記事はこちらです)