昔のゲイ雑誌をはじめ、多岐にわたるゲイ関連の書籍を読むことができる日本唯一の「ホモ本ブックカフェ オカマルト」。
その様子を2日連続でお届けしました(前編、後編)が、最後に日本のゲイ文化を語る上で、どうしても触れておきたい人物・東郷健氏の生き様を振り返ってみることにしました。詳細は以下から。
・「伝説のおかま」東郷健とは?
まず振り返っておきたいのが、2012年に亡くなった東郷健氏のプロフィール。
SMの巨匠・団鬼六氏の出身校としても知られる関西学院大学を1955年に卒業し、第一銀行行員やガソリンスタンド・ブロイラー養鶏場経営を経て、兵庫県姫路市に当時まだ珍しかったゲイバーをオープンしたほか、1981年にはゲイ雑誌「The Gay」を創刊するなど、ゲイ産業に従事。
そのかたわらで同性愛者であることを公言し、自らが立ち上げた「雑民の会」「雑民党」を通して各種選挙に立候補するなど政治活動にも注力。まだ現代と比べて同性愛に対しての理解が薄い1971年の参院選では選挙カーから「オカマ、オカマの、東郷、健。参議院議員立候補、オカマ、オカマの東郷 健がまいりました」と叫んだエピソードもある人物です。
・オカマルトで東郷健の生き様を垣間見てきました
「ホモ本ブックカフェ オカマルト」に所蔵されていた東郷健の著書。
「セックスのみを信じなさい」という衝撃的な「著者のことば」で始まる著作「ホモの道を行く」は1971年刊行。実に48年前の本です。
「ホモという精神障害児であるこのわたし」という表現がありますが、当時の「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-II、アメリカ精神医学会発行)」では、同性愛は精神障害扱いでした。
「関西学院大学4回生の時に初の同性愛体験があった」「(同性との)恋に破れて見合い結婚」などの赤裸々すぎる自伝。今では使えない言葉のオンパレードです。
今では見ることができない検印紙が貼られていました。
著者紹介もさすがと言わざるを得ません。
オカマルトには東郷健が手がけたゲイ雑誌「ザ・ゲイ」のバックナンバーも収蔵。読みたい号がある場合、事前に店主に伝えておくことをお勧めします。
さらに東郷健直筆のメッセージも収蔵。
あまりきれいではない言葉が並びますが、何のオブラートにも包まない生の言葉を書き記すことで「人間存在そのものと性は不可分であること」を訴えているのではないか……という思いが沸き起こってきました。
同性愛が精神障害とみなされ、隠花植物のように生きることを強いられる社会で「おかまとしての自分」の存在を訴え続けることに生涯を費やしてきたように思える東郷健の生き様。
今となってはその訴え方を「かえって偏見を招きかねない」と懸念する人もいるかもしれませんが、当時の同性愛者を取り巻く社会環境を鑑みれば、その流れに抗おうとした彼の気持ちは、決して理解できないものではない気がしました。
昔のゲイ文化を知ることができる貴重な資料満載のオカマルト。過去から学んだり、自分を振り返ってみる機会もたくさんあるはずなので、是非訪れてみることをオススメします。
・ホモ本ブックカフェ オカマルト(東京都新宿区新宿2-18-10 新千鳥街2F)
日曜日~水曜日 13時~20時:マーガレットの「オカマルト」
木曜日 13時~20時:ミノルの「モクマルト」
毎月第1日曜日 21時:大黒堂ミロの「ヨルマルト」
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