「自分の学生時代の尺度で考えて物を言っていませんか?それって老害の証ですよ」というお話です。詳細は以下から。
◆窮状を訴える学生を叩く意見がSNSで大ウケ
まず見てもらいたいのがこちら。新型コロナウイルスの影響で困窮している学生たちに対し、政府が10万円ないし20万円を給付することについて、学費の一律半額化を求める学生団体の代表が表明したコメントに対するSNSの反響です。
「大学に入ったことを後悔しているという人がいる。10万円、20万円もらったところで何になるんだと。費用対効果は非常に薄いと思う」というコメントの一部を切り取って「問答無用で殴っていいと思うよ」としたツイートが3.8万いいね(5月22日4時現在)を集めています。
◆ガンガン上がり続ける学費、2年目以降の支払額も増加
「意見を表明しただけで問答無用で殴られる社会」というのも恐ろしい話ですが、そんな人たちに見てもらいたいのが文科省のまとめた「国公私立大学の授業料等の推移」というデータ。
昭和50年~昭和63年(1975年~1988年)、国立大学の初年度納付金(授業料+入学金)は8万6000円から48万円に、私立大学は約28万円から約79万円に値上がりしました。
平成元年~平成27年(1989年~2015年)の場合、国立大学は52万円から約82万円、私立大学は約83万円から約112万円に値上がり。30年足らずで30万円も上がるなど、学生の負担は年々増えています。
私立大学では学部ごとに学費は大きく異なり、平成30年度のデータだと日本の製造業の担い手を育成する理系学部の初年度納付金は150万円を超えています。
さらに厄介なのが「ここ数年、入学金が減少傾向にある一方で授業料は増えている」という点。初年度納付金の伸びは抑えられる一方、2年目以降の支払額が増えているわけです。
かつては働いて学費を稼ぎながら大学に通う『苦学生』も成り立ちましたが、上記のように学費は年々高額化しているのが現状。学生がバイトで賄うのはもはや困難です。
◆学生や親を取り巻く環境は大きく変化、奨学金は当たり前に
また平成20年(2008年)以降、大学が「15週」の講義を厳守するようになったことで夏休みも短くなるなど、学生を取り巻く環境も大きく変化。昔ほど空いた時間を使ってバイトで稼げるわけでもありません。
そして忘れてはいけないのが今回の新型コロナウイルス流行だけでなく、2000年以降の不安定な雇用、リーマンショック、増税、健康保険の負担増などさまざまな要因で「大学生の親を取り巻く環境も厳しい」という点。
2005年度には4人に1人だった奨学金を借りている学生が、2015年度には2.6人に1人になるなど、もはや親が学費を出せるのは当たり前ではありません。
◆大学中退の先に待ち受ける「地獄」とは?
学生の現状を分かりやすくまとめると、こんな感じ。今の30~40代が学生だった頃とすら溝があるため、当時の尺度で語ることは危険です。
・学費は毎年どんどん値上がり
・授業時間が増え、バイトに割ける時間は減少
・親が学費を捻出できず、奨学金を借りる学生が増加
ちなみに奨学金を借りた学生が大学中退に追い込まれた場合、待ち受けているのは多額の借金を抱えた高卒(しかも既卒)としての就職活動。高校を卒業してそのまま就職するより圧倒的に過酷です。
これらを踏まえて「問答無用で殴っていいと思うよ」に賛意を示すリプライを見てみると、その空虚さが際立つ形に。なお、全国的に夜学(二部)は閉鎖される傾向にあります。
知れば知るほど切実なものと分かる「大学に入ったことを後悔しているという人がいる。10万円、20万円もらったところで何になるんだと。費用対効果は非常に薄いと思う」というコメント。
氷河期世代を見捨てた結果が今の超少子高齢化社会だけに、自己責任論で片付けてしまえる話でもありません。それでもなお「問答無用で殴っていい」と断じられるのでしょうか。
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