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ツートップ戦略でメーカーを切り捨てたNTTドコモは「悪者」なのか

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ソニーの「Xperia A」とSamsungの「Galaxy S4」を他の機種よりも大幅に安価で提供し、積極的な宣伝攻勢をかけるという「ドコモのツートップ」に対して端末メーカーから不満が寄せられ、まるで悪者であるかのような扱いさえ受けている感がありますが、はたして本当にそうなのかを考えてみました。詳細は以下から。

◆「ドコモのツートップ」に怨嗟の声を上げる端末メーカーたち
日本経済新聞社の報道によると、富士通やNEC、パナソニックなどの国内メーカー幹部が経済産業省に駆け込み、NTTドコモへの不満や批判を展開していたとされており、ツートップ施策に不満を持つメーカーが非常に多いことが分かります。

ドコモ、非情の決断 日の丸ケータイの終焉  :日本経済新聞

ドコモ本社と目と鼻の先の経済産業省。梅雨に入ったころからか、本館3階の商務情報政策局に、富士通やNEC、パナソニックなど国内メーカーの渉外担当幹部が顔色を変えて駆け込むようになった。

 「ソニーはともかく、サムスンを優位にするような戦略は許されるのでしょうか」
 「これ以上苦しくなったら、我々の立場がなくなってしまいます」

 多くは、国内の携帯電話ビジネスの頂点に立つドコモへの注文や批判。ソニーの「エクスペリアA」とサムスンの「ギャラクシーS4」の2端末だけ、値下げ原資の販売促進費を手厚くするドコモのツートップ戦略への不満だった。通信行政を司る総務省と協力してドコモに路線修正を働き掛けてくれるよう、懇願するメーカー担当者までいるという。

また、上記の記事では言及されていないものの、虎の子のIGZO液晶を搭載した「AQUOS PHONE ZETA」をNTTドコモにいち早く投入し、2012年冬モデルを盛り上げたシャープもツートップでハシゴを外されたことを受け、公式Twitterで「お前ツートップじゃないから」と自虐ネタを披露するなど、メーカー各社が不満を抱いていることは顕著です。

◆最後までメーカー各社を守っていたのはNTTドコモ
ある日突然ハシゴを外される形になったことを考えると、メーカー各社が恨みに思うのは無理からぬことだと思われますが、1つ考えておくべきなのが、他の携帯電話会社の状況。

ソフトバンクモバイルは2008年7月11日に「iPhone 3G」を発売してから5年間、そしてKDDIは2011年10月14日に「iPhone 4S」を発売してから1年9ヶ月にわたって、iPhoneを他のスマートフォンよりも安価な端末代金で提供するだけでなく、パケット料金まで値下げする、いわば「ワントップ」状態を続けています。

また、MM総研が発表した2012年度の携帯電話端末国内シェアによると、Appleは25.5%を獲得し、「携帯電話の4台に1台がiPhone」という形に。iPhoneを扱うKDDIとソフトバンクモバイルの2社を合わせると携帯電話ユーザー全体の半数を占めることを考慮すれば、単純計算で両社とも実に2台に1台のペースでiPhoneを販売していることになります。

くしくもAppleが携帯電話会社に課すとされる「スマートフォン販売台数全体の半数」という販売ノルマの存在を裏付けるような数字ですが、もちろんそのようなペースで販売されてしまってはKDDIやソフトバンクモバイルに他の端末メーカーが入る余地はありません。つまり、iPhone登場で販売数の落ち込みに苦しんだメーカー各社を最後まで支えていたのはNTTドコモだったわけです。

◆相次ぐ契約者流出、「ツートップ」はやむを得ない措置ではないか
しかしながらNTTドコモは他社の「ワントップ」に押され、2009年2月から53ヶ月(2013年6月末時点)にわたって契約者が流出するなど、かなりの苦戦を強いられ続けてきました。

昨今では月間10万人のペースで携帯電話が解約されるなど流出が深刻さを増し、開いた穴を通信モジュールや単価の低いMVNOサービスなどで埋めても足りず、過去1年間で3度純減を記録した月があるなど、さらに厳しい状況に陥っています。

これでは端末メーカー各社を平等に扱う今までのスタイルを続けることは到底無理な話。他社のように特定の端末をプッシュして「目玉商品」を作るツートップ戦略に切り替えたのは、NTTドコモ自身の生き残りを考えればやむを得ない話ではないでしょうか。

◆選ばれなかったのには理由がある
また、ツートップから漏れた端末メーカー幹部が「ソニーはともかく、サムスンを優位にするような戦略は許されるのでしょうか」などと陳情したとされていますが、NTTドコモ側が明確にしていないとはいえ、各社が「選ばれなかった理由」も考えれば分かりそうなもの。

J-PHONE時代からの付き合いでフラッグシップモデルをソフトバンクに優先的に供給してきたほか、経営難という一番の問題を抱えるシャープ、一部モデルの不安定さが際立った富士通、NTTと長年蜜月関係にあるものの、スマートフォンへのシフトが大幅に遅れ、そもそもブランドの確立すらままならず、尻すぼみしたNECやパナソニック……と、どのメーカーもiPhone対抗としてプッシュできるほどの決定打を欠いていると言わざるを得ません。

その一方でソニーやSamsungは早い段階からNTTドコモに安定した品質のスマートフォンを供給してブランドを確立しており、世界規模の生産量によって国内メーカーよりも安価に高性能モデルを製造できるグローバルメーカーに成長したことを考えても、選ばれるのは自然な流れだと思われます。

なお、NTTドコモは先日「はじめてスマホ割」の対象機種を拡大し、Xperia AやGalaxy S4以外の機種に対しても5040円の割引を導入。これはツートップ施策へのメーカーからの批判を和らげる措置であると同時に、ツートップを導入したにもかかわらず6月度に純減したことを受けたテコ入れであるとみられます。


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