スマホの普及もあり、今やすっかりライフラインとなった感のあるGoogle傘下の動画サイト「YouTube」。
気が付けば同サイトに動画をアップして広告を得ることで生活する「ユーチューバー」と呼ばれる人々すら生み出すほどに成長したプラットフォームですが、そこから日本の病理とも呼べそうなものが見えてきました。詳細は以下から。
◆日本
まずはYouTubeで「日本」を検索したところ。なお、検索結果は2014年12月4日時点のもので、今後変動する可能性がありますす。
検索結果の上位を見て驚かされるのが「【すごいぞ日本】 日本に来た外国人が驚いたコト・モノ」「日本すごい!【奇蹟の国日本 世界最強】海外から見た日本人の知らない日本のもの凄さ&日本の恐ろしさ」「他国が日本を愛する理由」「日本語最高:有色人種で唯一の先進国になった要因がここにある」など、とにかく「日本すごい」タイトルで溢れかえっている点。
各々の動画の解説も「我々日本人は、この日本がすばらしい国だということがイマイチ実感はないでしょう。しかし、外国人から見るとまさに夢の国なのです!!!」といった美辞麗句が目立ちます。
試しに検索窓に「日本」と入力して、半角スペースを空けると「日本 すごい」が一番上にサジェストされます。それだけ人気がある検索語句なのでしょうか。
◆韓国
続いては「韓国」で検索しようとしたところ。即座に「韓国 崩壊」「韓国人 嫌われ者」「韓国 反日」といったキナ臭い候補がサジェストされ……
結果はこんな感じ。「韓国経済崩壊」「【世界が警戒】韓国人には注意!」のような、お世辞にも好意的と解釈するのは難しいタイトルが溢れかえっています。
もちろんそれぞれの動画の解説も「完全に世界から嫌われてしまった韓国」や「モラルとは、人を騙し、人を欺き、 自分だけが得することを言うのでしょう。 どこぞの国の話しです(原文ママ)」など、どのようなことを言いたいのかが一目で分かるようなものばかりに。
◆中国
最後に中国。やはり韓国同様「中国 崩壊」「中国人のマナーの悪さ」などが表示されます。
サジェストや韓国の例を見ればある程度予想はできましたが、案の定「中国の破たんが見える」「中国軍が航空自衛隊に降参か!?」「中国崩壊」など、猛々しい文字が並ぶ結果に。
◆おまけ:アメリカ
ちなみにアメリカで検索すると、サジェストは至って普通。
しかし中国の脅威を呼びかけるものや、アメリカによる中国潰し計画、日本の自動車メーカー「スバル」がアメリカでヒットしている理由、アメリカ人は日本をどう思っているか……といった、「中国」「韓国」と「日本」を検索した時の中間のような内容が上位に表示されます。
◆日本はいつから謙虚さを欠いた国になったのか
まさに「日本すごい」「中国、韓国は世界の迷惑で崩壊すべき」とでも言うかのような動画たちが上位に表示される結果となりましたが、少し気になるのは、これらの動画の大半が「実際に視聴数を稼いでいる人気作品である」という点。
最近の検索エンジンは各ユーザーに合わせ、よく検索している内容が上位に来る特性がありますが、BUZZAP編集部では上記のような動画を進んで視聴するようなことは特にありません。
つまり「日本はすごい!」「日本は世界から愛されている」「外国人が日本のこんなところに感嘆した」といったテレビ番組や書籍などが溢れかえっているのを見ても分かる通り、これらのコンテンツに対して日本人による相当数のニーズがあるからこそ、検索結果の上位に表示されているわけです。
確かに日本には世界に誇るべき文化があり、中国や韓国が日本にとって決して好ましいスタンスでは無い場合も散見されます。しかし、だからといって仮に「俺はこんなにも優れていて周囲からも愛される人気者。でもアイツらは劣った迷惑な嫌われ者」と自ら主張するような人間がいた場合、周囲はその通りの評価をしてくれるでしょうか。
なお、このような「自画自賛」の雰囲気が盛り上がったとしても、日本人の中だけで完結しているのであれば問題無いはずですが、今年10月に開催された「東京国際映画祭」では「ニッポンは、世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく」という、謙虚さのかけらも無いキャッチコピーを世界に発信してしまう事態に。
東京国際映画祭は好きだけど、このコピーは最低だと思います。個人の業績を国に重ねるのが最近の流行だけど、みっともないことだと思う。“@molmot: 黒澤自身はニッポンに不満たらたらだったことも、お忘れなく。 pic.twitter.com/APbRqgJUP6”
— 松江哲明 (@tiptop_matsue) 2014, 10月 26
ともすれば余裕の無さの裏返しと受け取ることすらできてしまう、これらの自画自賛。自らの評価を見誤らせる麻薬のようなものであるのと同時に、他国を下に見る排外主義的な考え方につながるおそれもあるわけですが、はたしてこの風潮はいつまで続くのでしょうか。