昨年夏にドコモが先陣を切る形でスタートさせた次世代音声通話サービス「VoLTE」。
従来の3Gと比較して如実に音質が向上した上、完全通話定額プランも提供されるようになったため、外回りの営業マンなど、音声通話を多用するユーザーにはまさに福音だったわけですが、そう遠くないうちに、さらなる高音質化が実現します。詳細は以下から。
◆ドコモが「EVSコーデック」をWMC 2015に出展
GSMA Mobile World Congress 2015 | News & Notices | NTT DOCOMO
NTTドコモが本日開設したページによると、同社は2015年3月2日(月)~5日(木)までの4日間、バルセロナで開催される「Mobile World Congress 2015」に15回目となる出展を行うそうです。
主な展示内容として「ネットワーク仮想化技術」「5G」「ポータブルSIM」のほか、新たな音声圧縮技術「EVSコーデック(以下、EVS)」が挙げられており、通話先の相手が、まるで隣にいるかのような高品質な音声通話を体験できるとしています。
◆現行のVoLTEを支えるコーデックは「AMR-WB」
なお、現行のVoLTEは「AMR-WB(Adaptive Multi-Rate Wideband)」というコーデックを採用することで、従来の2G/3Gで用いられていた「AMR」よりも高音質化を実現。
人間が聞き取れる音の幅(可聴域)が20Hz~20000Hzと言われているのに対し、AMRでは300Hz~3400Hzしかカバーできませんでしたが、AMR-WB導入によって50~7000Hzまでカバーできるようになったため、非常に聞き取りやすくなりました。
ちなみにAMR-WB自体は機種自体が対応していれば3Gネットワークでも利用できるため、ソフトバンクが昨年末からAQUOS CRYSTALおよびAQUOS CRYSTAL Xで「HD Voice(3G)」としてサービスを提供中。
しかし3G回線を用いた音声通話は電波の利用効率が悪く、LTEへとユーザーを移行させたい携帯電話会社にとっては、あくまでVoLTEへの完全移行までのつなぎという意味合いが強いのが現状です。
◆VoLTEの真打ちとなる「EVS」、その実力は?
このように、電波の利用効率の悪さに目をつぶればVoLTEでなくともある程度高音質化できてしまう音声通話。しかしドコモが出展することを表明した新コーデック「EVS」は、まったく格が違います。
クアルコムと共同開発を進めていたエリクソンが(PDFファイル)昨年12月に公開したホワイトペーパーに記されたEVSの対応周波数帯。なんと人間の可聴域すべてをサポートします。
通信事業者のネットワーク効率が向上するよう設計されている点も大きなポイント。ニーズに応じて柔軟な運用が可能で、「AMR(12.2Kbps)」や「AMR-WB(12.65Kbps)」とほぼ変わらない13.2kbpsで最大14000Hzの高音質通話を利用できます。
さらに従来規格と同じ音質であればデータ量を削減できるため、災害時の安否確認など、通話が殺到する状況にも対応しやすくなるほか、ビットレートを上げれば、今までにない音楽品質(最大20000Hz)の音声通話も楽しめるようになります。
もちろん既存のAMR-WBも内包。VoLTE導入に合わせて一足先にフルLTE化を進めてしまったauはもちろん、LTEエリアが完成していない通信事業者もEVSの恩恵を最大限に受けられるわけです。
ちなみにEVSの主要なコーデック仕様は昨年、移動通信技術の標準化団体「3GPP」で承認済み。気になる商用化の時期は2015年内と予想されていますが、あえてこの時期に展示を行うということは、国内の事業者で一番乗りを果たすのはやはりドコモなのでしょうか……?