総務省が働きかけることで、見直しが進みつつある携帯電話の2年縛り。
更新月の延長、2年契約以外のプランの検討など、順調に進みつつあるかと思いきや、どんどん骨抜きになりつつあります。詳細は以下から。
◆進みつつある携帯電話の2年縛り見直し
まずは携帯各社の動きをざっとおさらい。
<更新月延長>
総務省が2年縛りの見直しが求める有識者会議を設置することを受け、今年4月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は2年契約経過後に違約金無しで契約を解除できる「更新月」を1ヶ月から2ヶ月に延長することを決めました。
4月の報道の段階では、更新月の延長は冬モデルが発売される2015年10~12月に導入される予定で、ワイモバイルブランドのみ2016年1~3月にずれ込む見通し。
「気付かないうちに更新月が過ぎていた」という苦情が多いことも受け、メールで更新月を告知するサービスも導入されると報じられています。
<新プラン検討>
そして6月に総務省が2年縛りを見直させる方針を固めたことを受け、携帯各社は2年ではなく、1年契約の新料金プランを導入することを検討。
新料金プランの案として「2年縛りで月額2700円、契約解除料9500円」「縛り無しで月額4200円」の中間となる、「1年縛りで月額3500円、契約解除料5000円程度」が挙げられているほか、利用期間に応じて契約解除料の段階的な引き下げも視野に入れられています。
そんな中、KDDIの田中社長が今月行われた2016年3月期第1四半期の決算発表会において、2年縛り見直しの一環として「最初の2年だけ割り引き、あとは好きな時に解約・MNPできる」新プランの案を率先して提示。
今までのような「2年ごとに自動更新され、更新月を逃すと1万円程度の契約解除料が発生する」という心配が不要になるもので、残る2社も追従する見通しとされています。
◆新たな2年縛り登場、ソフトバンク・ドコモ主導で見直しが有名無実化
しかしそんな2年縛り見直しの波を真っ向から打ち消すのが、ソフトバンクとドコモが主導して進めている新たな縛り。
両社はMNPで新規契約するユーザーを対象に、短期解約を防止するための措置として「本体価格を割り引く代わりに、一定期間内にパケット定額プランを変更・解約すると違約金が発生する制度」を相次いで導入しています。
以下にざっと流れをまとめましたが、2015年に入ってからというもの、お互い競い合うかのように提供条件を厳しくしています。
<2014年2月>
ソフトバンクが「のりかえサポート」に契約後6ヶ月以内にパケットプランを定額プランからそれ以外に変更、解約すると、違約金2万1000円が発生する縛りを付加。
<2015年2月>
ドコモが6ヶ月以内にパケット定額プランを変更、解約すると高額な違約金が発生する「端末購入サポート」をXperia Z3、Xperia Z3 Compactに導入。
<2015年3月>
ドコモが「端末購入サポート」対象機種を拡大。
<2015年4月2日>
ソフトバンクが「一括購入割引」の条件を変更。パケット定額プランを12ヶ月以内に変更・解約すると、契約期間に応じて最大5万円程度の違約金(13ヶ月目からは0円に)が発生。
<2015年4月23日>
ドコモが「端末購入サポート」の期間を6ヶ月から12ヶ月に延長。「購入日の翌月1日から起算して12ヶ月を超える前に」という規定から、実質14ヶ月縛りに。
<2015年9月1日>
ソフトバンクが「一括購入割引」の条件を変更予定。パケット定額プランを24ヶ月以内に変更・解約すると、契約期間に応じて最大5万円程度の違約金が発生するように。
高額な違約金を設定することで短期解約を防ぐ……というのは分かるものの、さすがに料金プランの2年縛りとは別に、パケット定額プランすら2年間変更できないようにしてしまうのは、新たな「2年縛り」としか言わざるを得ず、2年縛りの見直しはすでに有名無実化しつつあります。
◆実は機種変更にも縛り、SIMロック解除導入も強まるユーザーへの締め付け
パケット定額を解約した場合、ユーザーは毎月の基本料金から一定額が割り引かれる「月々サポート」や「月月割」の対象外になることを考えると、ただでさえ割引を受けられなくなる上に、違約金まで発生するというのは、携帯会社にとって少し都合が良すぎるのではないでしょうか。
今年5月以降に発売された携帯電話であれば、購入から半年後に「SIMロック」を解除し、どの携帯電話会社のSIMカードを挿しても利用できるようになったこともあって、ユーザーの流動性が向上することを警戒していると思われる携帯各社。
上記の例以外にも、「買ったスマホが不具合だらけで使いづらいから機種変更したい」という理由であったとしても、短期間で機種変更したユーザーに対して、新しく買ったスマホの本体代金を割引無しの全額実費負担させるドコモなど、さすがにやりすぎなのでは……と思わざるを得ないケースが見受けられるだけに、今後が気になるところです。