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あまりに不公平な競争環境に憤り、クロネコヤマトが日本郵便の甘やかされっぷりを暴露

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郵政民営化に伴い、長年国営で行われてきた郵便事業を民間会社となる日本郵便株式会社が担うことになって数年が経過しましたが、同じ民間企業であるクロネコヤマトが不公平な競争環境に対し、憤りすら垣間見えてくる意見広告を掲載しています。詳細は以下から。

これが「いい競争で、いいサービスを。」と題されたヤマトの意見広告。「公平・公正な条件(イコール・フッティング)」のもとで生まれる競争こそが国民の利便性の向上と経済の活性化につながるという主張のもと、今の制度のままでは対等な競争ができず、一日も早くすべての宅配便事業者が対等に競い合えることを希望するとしています。
いい競争で、いいサービスを。|ヤマト運輸

◆「ユニバーサルサービス」として手厚く守られている郵便業務
意見広告において、ヤマトは日本郵便の郵便業務が、日本全国津々浦々で公平かつ安定的な提供の確保が求められる「ユニバーサルサービス」として必要だとした上で、ユニバーサルサービスを維持するための措置を問題視しています。

例えば電話の場合、離島や山間部といった高コスト地域での電話回線網や、公衆電話、110番・118番・119番などの緊急通報サービスを提供することでNTTが背負う赤字を、固定・携帯電話利用者の「ユニバーサルサービス料」で補填する仕組みを採用していますが……
日本郵便に対しては、「郵便業務」をユニバーサルサービスとして維持することが義務付けられる代わりの優遇措置として、事業所税や固定資産税・都市計画税を免税ないし減税。さらに郵便物の集配車両の駐車違反免除、通関手続き簡素化、航空機や船舶での郵便物の取り扱い優先といった措置まで講じられています。

上記の内容だけでも、かなりの優遇措置を受けていることが分かりますが、総務省 情報通信審議会 郵政政策部会が2015年9月28日に発表した最終答申「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」では、日本郵便に対し、これまでの優遇措置に加えて、さらなる優遇措置を実施すべきという内容になったとのこと。
しかし日本郵便の2014年度業務区分収支によると、郵便業務が黒字であるのはもちろん、赤字だった第四号(荷物、不動産及び物販等の業務)を含めた全体でも黒字であるため、ユニバーサルサービスの名の下にこれ以上優遇措置を講じるのはおかしいのではないか……という話になります。

◆郵便業務向けの優遇措置を受けながら、宅配便業務を行う日本郵便
さらに問題となるのが、日本郵便が手がける「ゆうパック」「ゆうメール」といった宅配便業務。同社はユニバーサルサービスとしての郵便業務に対する優遇措置として、各種減税・免税を受けている事業所で、宅配便業務も行っているわけです。
同じ宅配便業務を手がけているにもかかわらず、減税・免税措置を受けられる日本郵便と、受けられないクロネコヤマト。
あまりに不公平な競争環境を受け、クロネコヤマトは郵便業務と宅配便業務の会計を厳密に区分し、ユニバーサルサービスとして維持するべき事業、サービスの範囲を特定した上で、それがやむを得ず赤字となる場合に限り、最小限の優遇措置を実施することを求めています。

また、ユニバーサルサービスとされる郵便業務についても、日本郵便の「レターパック」「スマートレター」はオークション落札品などのやり取りに利用することが推奨され、「EMS(国際スピード郵便)」は対象を手紙や書類どころか冷蔵品の送付にまで拡大。実質的に各社が手がける宅配便業務と競合するものになるなど、不公平な競争環境は拡大の一途をたどっているのが現状です。

駐車違反の取り締まりが強化され、宅配便を手がける各社がドライバーを複数人乗せるなどの対応に追われる中、宅配便と競合するサービスを「郵便業務」として提供することで、交通規制の免除まで受けられる日本郵便。クロネコヤマトは「公平・公正な競争条件」にも、規制緩和の流れにも大きく逆行するとして、見直しを求めています。

◆日本郵便だけに有利な「信書(手紙)」の法制度
最後にクロネコヤマトが挙げたのが、日本の信書に関する法制度。宅急便、ゆうパック、ゆうメール、メール便などの「荷物を運ぶサービス」を使って信書を送ると、差出人および運送事業者が罰せられるため、事実上、送ることができるのは日本郵便の郵便業務だけです。
しかもわずかな文面の違いで荷物として運べたり、運べなかったりするという複雑さ。クロネコヤマトは総務省の窓口に問い合わせても、その文書が信書かどうか即答できないケースがあるほどとした上で、「荷物を送る側、運ぶ側のどちらにとっても、分かりにくく、不便な制度」としています。

そこでクロネコヤマトは、送付が規制される信書の範囲を、文面ではなく「文書を入れる封筒の大きさ」で決めることを、2013年12月に郵政政策部会に提案。しかし主張は受け入れられず、信書の範囲は曖昧なままとなったため、差出人が知らないうちに信書を送ってしまうリスクを防ぐため、2015年3月31日をもって「クロネコメール便」を廃止したとのこと。

◆あまりに強すぎる元国営企業、せめて競争環境だけでも揃えるべきではないか
元国営企業として、それぞれの分野で今もなお支配的地位を維持し続けている日本郵便やNTT。
その背景には国策や税金によって長い時間をかけて整備された、日本全国津々浦々をカバーできる強大なインフラがあるため、民間事業者が簡単に立ち向かえるものではありません。
2014年にBuzzap!でお伝えした、NTTグループのシェア。民営化され、KDDIをはじめとする各種事業者が参入してかなりの月日が流れてもなお、圧倒的なシェアを誇っており、民業が育たなくなるという観点から、グループ間での連携には厳しい制約が課されていました。

しかしここまでシェアを持っているNTTでさえも、競合各社に押されるやいなや、総務省が光ファイバーと携帯電話回線のセット販売を認めるなど、非常に甘い裁定が下され、今年春には無事「ドコモ光」の提供にこぎつける結果に。NTTといい、さらなる優遇措置を講じることが検討されている日本郵便といい、抱えている問題は本質的に同じです。

このような競争環境では、自前でゼロからインフラを整備してきた民間事業者が浮かばれないような気がしてなりませんが、今後も「最後に笑うのは元国営企業」という世の中であり続けるべきなのでしょうか。

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