連日ニュースを賑わせている加計学園の獣医学部問題。
認可プロセスなど、さまざまな観点から問題が論じられていますが、そもそも加計学園に獣医学部を設置しようとすること事態、馬鹿げているのではないかというお話をお届けします。詳細は以下から。
◆加計学園が運営している大学の偏差値は?
まず見てもらいたいのが、学校法人加計学園が運営している大学の実態。公式ページによると「岡山理科大学」「倉敷芸術科学大学」「千葉科学大学」の3校があり、獣医学部の設置が予定されているのは岡山理科大学。
しかし大学受験情報サイトによると、岡山理科大学で獣医学部と関係のありそうな学部学科の偏差値はわずか35~45。大学全体を見渡しても偏差値50に満たない学部が多く、学科によってはボーダーフリー(偏差値が付けられない水準)となっているのが現状です。
・理学部
生物化学:37.5
臨床生命科学:35.0
動物:45.0
・工学部
バイオ・応用化学:40.0
ちなみに加計学園系列の千葉科学大学の偏差値はもっと低く、大学を構成する薬学部・危機管理学部・看護学部すべてが偏差値35~40しかありません。
偏差値がすべてだとは言いませんが、獣医学部を設置するに足るレベルかどうかを考えると、疑問符がともります。
◆獣医学部、獣医学科がある大学の有名どころを見てみよう
以上のことを踏まえた上で、獣医学部や獣医学科がある大学を見てみましょう。ちなみに各大学の獣医学部・学科の偏差値は岡山理科大とは比べものにならないほど高く、最低でも60前後です。
北海道大学(獣医学部)、帯広畜産大学(畜産学部共同獣医学課程)、酪農学園大学(獣医学群)、東京大学(農学部獣医学課程)、東京農工大学(農学部共同獣医学科)、北里大学(獣医学部)、日本大学(生物資源科学部獣医学科)、大阪府立大学(生命環境科学部獣医学科)など国立大学10校、公立大学1校、私立大学5校の計16大学(合計定員930名)
ここで見逃してはいけないのが、「多くの獣医学部・獣医学科は農学部を基点としていること」。大学ないしその前身となった学校が地域の農業、畜産に携わってきた流れの中で生まれたケースがほとんどです。
◆獣医師不足を理由に獣医学部を新設するとしても、加計学園である必要は一切無い
今回、加計学園に獣医学部を新設する大義名分として「四国に獣医学部・学科が無いこと」「獣医師の不足」「鳥インフルエンザなどの人獣共通感染症が拡大する中、需要が高まっていること」などが挙げられていますが、これもおかしな話。
なぜならば四国には、かねてから地域の農業、畜産業に根ざした研究活動を行っている愛媛大学や香川大学の農学部があり、これらの大学に獣医学科の設置を認めた方が合理的であるからです。
さらに両大学には医学部もあるため、学部間で連携して人獣共通感染症に対策できるというメリットも。
つまり、農学や医学分野で実績があるわけでもない加計学園に全国の獣医学部、学科の定員の2割近い160~170名規模の獣医学部を作らせる合理的な理由はどこにもなく、馬鹿げていると言わざるを得ないわけです。
◆高偏差値の学部を作らせる、ただの利益誘導ではないのか
以上の理由から、決して合理的ではない加計学園の獣医学部新設。
もはやボーダーフリーの学部学科を抱えた大学に、高偏差値が期待できる「獣医学部」という箔付けをしようとしただけの、「特区」を都合良く使った単なる利益誘導ではないか……とすら考えてしまいます。
それでもなお獣医学部を新設するのが加計学園でないといけないというのであれば、それは一体どのような理屈からなのでしょうか。非常に気になるところです。