2017年夏モデルとしてauおよびソフトバンクから発売された「HTC U11」。
世界最高画質のカメラや本体を握ることで操作できるインターフェース「エッジセンス」を備えるなど意欲的なモデルでしたが、日常遣いを重ねてきた中で出てきた、どうしても改善して欲しいと思った不満点をまとめてみました。
※あくまで個人の感想です。詳細は以下から。
◆HTC U11とは?
まずは「HTC U11」を振り返り。ゴリラガラス5の3Dガラススクリーンに覆われた5.5インチWQHD(2560×1440)Super LCD 5液晶にSnapdragon 835、4GB RAM/64GB ROM採用のフルスペックモデルです。
屈折率の高い希少素材を幾重にも重ねることで、角度ごとに色味が違って見える「リキッド・サーフェイス」ガラスを背面に採用。HTC J butterflyシリーズ以来、久しぶりに防水対応したところも大きなアドバンテージです。
5軸制御光学手振れ補正、F値1.7レンズ、1.4μmピクセルの1200万画素裏面照射型 (BSI) センサー採用の背面カメラはグローバルなカメラ評価機関「DxOMark」で、当時世界最高となるスコア90を叩き出しました。
4つの360°全方位マイクと音声フォーカス技術によって、あらゆる方向から最高の臨場感を楽しめる3Dオーディオ録音や、動画撮影時はズームアップに合わせて特定の方向の音をズームする仕組みも実現しました。
本体を握るだけで操作できるインターフェース「エッジセンス」を使えば、スリープ時からそのままカメラ起動、特定アプリの呼び出しなどもできます。
◆HTC U11は何が使いづらいのか
上記の内容だけを見ると、「カメラだけでなく使い勝手にまで気を配った良いスマホ」なのですが、それらを台無しにしていると感じたいくつかのポイントを挙げていきます。
・スクリーンショット撮影時のシャッター音がうるさい
購入してすぐに使いづらさを感じたのがこの点。電源ボタン+音量下ボタン同時押しでスクリーンショットを撮ることができますが、走行中の電車でも周りに聞こえるレベルのシャッター音が鳴ります。
決め手になるサードパーティー製アプリも少ない中、スクショを快適に撮るための機能が別途用意されているようにも見えず、Android 6.0未満のauスマホで提供されていた簡単&無音&選択したエリアだけを残せる「スクリーンショットシェア」が恋しく思えてくるほど。
スマホを握るだけでスクリーンショットを撮れるよう、エッジセンスを設定することもできますが、シャッター音が鳴る限りは使う気になれません。iPhoneすら無音でスクリーンショットを撮れるようになった今、派手に音を鳴らす意味はあるのでしょうか。
・カメラの自由度が低い
最大32秒の長時間露光やRAW形式に対応したプロモードも備えたHTC U11ですが、カメラの設定項目が少なく、特に「16:9(9MP)」「4:3(12MP)」「1:1(9MP)」しか保存サイズの選択肢がないのには困らされました。
HTC U11同様、カメラ機能の充実をうたっていた2016年冬モデル「isai Beat」の設定画面。同じアスペクト比でも保存サイズを選ぶことができるなど、細やかな気配りが見えます。
・夜景撮影に弱い
そしてやはり言及せざるを得ないのが、当時「世界最高画質のカメラ」とされていた一方で、夜景撮影にあまり強くなかった点。
Galaxy Note 8(右)と比べても分かりますが、「HTC J One」の時代から夜景では必要以上に明るめに撮ろうとしてイマイチな写りになる弱点があります。これはシャープのAQUOSシリーズと同じ弱点ですが、カメラを強く売りにしている分、残念感は否めません。
・「ギャラリー(アルバム)」アプリがない
個人的に最も不満だったのがこの点。多くのスマホには撮った写真やダウンロードした画像などを見やすくするため、メーカー独自の「ギャラリー」「アルバム」アプリなどが実装されていますが、HTC U11には「Googleフォト」が入っているのみです。
「フォト」タブを開くとカメラで撮影した直近20枚(最大4枚×5段)程度の写真を見ることができますが、LINEでもらった画像やダウンロードした画像、イベントごとにフォルダ分けした写真などを見るためには一覧性最悪の「アルバム」タブを利用する必要があります。
ちなみにisaiシリーズのギャラリーはこんな感じ。カメラで撮影した最新の写真が大きなサムネイルで一番上に表示され、その下に1列あたり最大4つずつサムネイル付きのフォルダが表示されるため、写真や画像の閲覧性に優れています。
慣れればGoogleフォトも悪くないかもしれませんが、筆者がかつて使っていた「HTC EVO 3D」「HTC J Butterfly」にはギャラリーがプリインストールされていたこと、HTC U11が「写真撮影を楽しむスマホ」であることを考えると、はっきり言って不満です。
・誤爆注意のエッジセンス、特にカメラは要注意
目玉機能のエッジセンスも、カメラを起動できるようにしておくと「電車でポケットから取り出そうとした時にカメラが誤起動→手が画面に触れたのか、ズボンのポケットから出した途端にシャッター音が鳴り響く」など、盗撮犯と勘違いされかねない目に遭ったため、あまり使わなくなりました。
エッジセンスの圧力設定画面。ポケットからスマホを取り出す際、指先で両サイドを挟むようにして端末を持ち上げるケースがあると思われますが、圧力がピンポイントでかかるため、力をかけたつもりがなくともエッジセンスが起動することがあります。
しかもHTC U11のイヤホン端子は下にあることから、上下逆さまにしてポケットに入れざるを得ず、必然的にいつもエッジセンスの認識エリア(下半分の側面)を持ってポケットから取り出すことになるわけです。「誤作動させるな」という方が無理ではないでしょうか。
・全体的にかゆいところに手が届かなくなってしまった
ほかにも「ファイルマネージャーがプリインストールされていない(こちらからインストール可能)」「音楽プレーヤーアプリはPlay Musicのみ」など、絶妙に使い勝手の悪いHTC U11。
「時計ウィジェットの天気予報(AccuWeather.com)の精度が微妙」「伝言メモ機能がない」など、連綿と受け継がれてきた弱点も相まって、Android黎明期に使いやすいスマホで市場をリードしていたHTCの面影がかなり薄れつつあります。
・「素のAndroid=最も使いやすい」では決してない
ギャラリーや音楽プレーヤーといった定番アプリすらプリインストールせず、GoogleフォトやPlay MusicなどのGoogle純正アプリを使わせるようになった近年のHTC。OSアップデートのために素のAndroidに近い構成を目指した結果かもしれません。
しかしコスパを求めて買ったAndroid Oneスマホならともかく、フラッグシップスマホでこのかゆいところに手が届かない感じはどうなのか……という気分になってしまったため、もう少しユーザーの目線に立った作り込みをしてもらいたいところです。