「女性医師は離職するから必要悪」として、女子受験生の一律減点が2011年から行われていた東京医科大。
一次試験、二次試験と試験を経るごとに女子の割合が下がっていき、最終的には男女比率5:1になるという、あまりに露骨な内容でしたが、不正が明るみに出たことで、莫大な補償を求められる可能性が浮上しました。詳細は以下から。
◆一般の私大より高価な東京医科大の受験料
まず見てもらいたいのが、東京医大の医学科入試情報。
一般的な私大だと検定料(受験料)の相場は一般入試が3万5000円、センター利用入試が1万8000円といったところですが、東京医大の一般入試は6万円かかります。
センター利用入試でも4万円。授業料の桁が1つ違う私立医大だけあって、受験料も高額です。
そして今回、入試不正が明らかになったことで問題となってくるのが、東京医大は所定の受験料を受け取っているにもかかわらず、定められた役務(=募集要項にある通りの入試)を提供していないという点。
もちろん「女子の一律減点」などは入試の要項に書かれていないため、同大は女子受験生たちから受験料をだまし取ったことになるわけです。
◆「女子一律減点」の実態、不正に落とされた受験生の数は?
ちなみに先日もお伝えした通り、平成30年度入試では男子2196人、女子1481人が受験しており、男女比はおよそ3:2でしたが……
一次試験(英数理の筆記試験)合格者の時点で男女比は2:1に。二次試験(小論文、面接、適性検査)合格者の時点では女子受験生だけ8割も落とされ、5:1にまで差が広がっています。
3:2の男女比が2:1、5:1とどんどん広がっていくのはあまりにも不自然。女子の一律減点は一次試験、二次試験の両方で行われていた可能性が高いと判断せざるを得ません。
そこでBuzzap!では平成30年度の入試情報を元に、女子の一律減点が行われず、一次試験・二次試験合格者の男女比が3:2のまま変わらないものとして、不正に落とされた女子受験生の数を推定してみました。
・一次試験
受験者3677人に対し629人(男子412人、女子217人)が合格した一次試験。もし男女比が同じなら男子377人、女子252人が合格していたことに。つまり35人が不正に不合格扱いされた計算になります。
・二次試験
そして241人(男子198人、女子43人)が合格した二次試験。もし女子の一律減点が行われず、男女比が同じなら男子145人、女子96人が合格していた計算に。つまり53人が不正に不合格扱いされた計算になります。
一次試験・二次試験で年間88人、実に90人近くの女子受験生が不正により涙を飲んだことになる東京医大の入試。2011年度入試から不正は行われていたとのことなので、単純計算でのべ700人以上が被害を受けたことになります。
◆東京医大が補償すべき内容を、阪大のケースから考えてみた
なお、今年春に阪大の入試ミスが発覚した際、同大学は落とされた30人を追加合格とした上で、以下のような補償を実施しました。
・他の大学に払った入学金や授業料など「本来負担する必要がなかった経費」
・予備校代
・慰謝料
しかし東京医大のケースで問題となってくるのが、医学部の特殊性。医学部受験のための予備校は授業料が高く、河合塾の以下のコースの場合、授業料はおよそ185万円です。
ハイレベル私立大医進アドバンス個別指導つきコース | 関東 | 高卒生 | 大学受験科 | 大学受験の予備校・塾 河合塾
さらに東京医大が公開している入試情報を見ると、医学部は多浪が当たり前。4浪以上すら相当数います。不正入試のせいで多浪を余儀なくされ、数百万円規模の負担を強いられた受験生が存在する可能性は十分考えられるわけです。
医師の需給バランスが崩れて医療が崩壊しないよう、医学部に対しては厳重な定員規制が行われているため、落とされた女子受験生たちを追加合格とするのは非常に困難。
もし受験生たちが入試不正による受験料返還、不正に不合格とされたことによって生じた金銭的負担、慰謝料などを求めた場合、東京医大が求められる補償額は十億円規模になってもおかしくありません。
また、「どの受験生をどれだけ減点したのか」などの記録が残っていない場合、被害範囲を特定できず、最悪すべての女子受験生に受験料を返還する必要すら浮上してくるため、今後に注目が集まりそうです。