スマートフォンと連携できるウェアラブルデバイスにスポットライトが当たり始めた昨今ですが、着るだけで生体情報を計測できる特殊な繊維「hitoe」が開発されました。詳細は以下から。
◆生命活動をモニタリングできる特殊繊維「hitoe」
報道発表資料 : 着るだけで生体情報の連続計測を可能とする機能素材“hitoe”の開発及び実用化について | NTTドコモ
NTTドコモやNTT、東レなどが連名で発表したプレスリリースによると、新たに開発された機能素材「hitoe」は最先端繊維素材であるナノファイバー生地に高導電性樹脂を特殊コーティングしたもので、着るだけで心拍数・心電波形などの生体情報を取得できるというもの。
耐久性に優れ、生体信号を高感度に検出できるとしており、NTTドコモは2014年中を目途に「hitoe」を利用した生体情報計測用ウェアとスマートフォンなどを活用したサービスの提供を開始する予定。
「hitoe」を用いたインナーには体型差をカバーするため、着用者のサイズが多少異なってもほぼ一定の着圧が得られるよう、設計技術を活かしたストレッチ素材が用いられたほか、配線の取り付け方にも、ストレッチ性を損なわないような縫製技術や絶縁性伸縮素材が採用されています。
◆発表会の様子
東レ株式会社 繊維事業本部 機能製品・縫製品部門長 首藤和彦氏によると「hitoe」は「human」「intelligence」「to expand」、そして「単衣」を意味し、「人の繋がりが新たな命を運ぶ」がコンセプトに。日本を中心にライフ・カルチャー・ヘルス・スポーツ・フューチャーといった分野へと拡大していこうと考えているとのこと。
続いて東レ株式会社 テキスタイル・機能資材 開発センター所長 桑原厚司氏が登壇。
通常の繊維は15μm程度の太さを持っていますが、hitoeは700nm程度。皮膚への密着、変形効果を実現し、洗濯しても導電性の樹脂は剥がれない仕組みに。
適度な伸びと締め付けを持つことにより、適度な肌への密着性を可能にしたほか、体型差をカバー。身体を動かしても生地が追従するのが強みです。
そして日本電信電話株式会社 先端技術総合研究所 所長 村瀬淳氏によると、hitoeを活用した心拍数・心電波計測用ウェアを生体センサとして設計。Bluetoothを用い、スマホアプリでモニタリングすることで、運動中の選手の心拍数変化から負荷と回復の度合いを把握することもできます。
脈拍感覚の揺らぎを利用し、緊張状態やリラックスの度合いも把握可能。スポーツ選手だけでなく、運動初心者にも活用できる技術です。
株式会社NTTドコモ 執行役員 ライフサポートビジネス推進部長 中山俊樹氏による説明。2014年中にスポーツや健康増進など、さまざまな分野で展開を予定しています。
◆これが「hitoe」だ
発表会場でディスプレイされた「hitoe」採用の衣料たち。
トレーニングウェア、ストール、運動用ウェアなど、さまざまな用途に用いることができるのがhitoeです。
hitoe採用シャツ。
心電波形をモニタリングしています。
そしてこれがコアとなるhitoe本体。なんだかサロンパスのような見た目ですが、これが最新技術の粋を尽くした機能素材。
実際にhitoeを用いたデモも行われました。丁寧に説明されているため、今ひとつピンとこなかった人でも把握できるのではないでしょうか。
着るだけで生体情報を計測できる東レ・ドコモ共同開発の特殊繊維「hitoe」デモ – YouTube
実際にサイクリングマシンを使った状態での心拍数モニタリングも可能。
◆質疑応答
・日本経済新聞林:
衣料品にした場合、洗濯にどれだけ耐えられるのか。バッテリーはどれだけ持つのか。単価は?
・東レ桑原:
ナノファイバー繊維の間隙の中に伝導性樹脂を導入したため、耐久性は高い。ネットの中に入れて洗えば30回の洗濯には耐えられる。手洗いであれば50~60回洗っても耐久性を維持できます。バッテリーはボタン電池を使っているが、どのような信号をどれだけ送るのかによる。心拍数であれば1ヶ月以上の製品もある。用途に合わせて寿命が変わります。価格は色々な用途やスペックのものが出てくるので、申し上げられる段階では無い。
・日経デジタルヘルス オタニ:
NTTドコモがサービスを主体的に提供するということだが、hitoeを使ったサービスをスポーツクラブや寝具・ハウスメーカーが提供する考えはあるのか。心拍の速度を解析すると血圧を算出できる技術が開発されているが、推定血圧を算出できるところまで持っていけるのか。睡眠時無呼吸症候群をモニタリングできるのか。心電図の電極数をお教え下さい。
・NTTドコモ 中山:
フィットネスセンターの方と共同で会員の皆様に提供するといったやり方は、コラボレーションの枠組みの中で決まっていくことになると思います。ドコモだけが提供するのではなく、ドコモのサービスと関連付けたものについては、ドコモとしてやらせていただく。他の事業者やウェアを作る事業者との連携もあると思っています。
・NTT 村瀬:
NTTの研究所の方ではB to B、B to Cといった幅広い分野での利用を考えている。遊びの領域やスポーツ分野、健康分野についても大学との共同研究も進めています。現状では研究段階ではあるものの、多極化を進めていく考えです。
・日本経済新聞 金子:
hitoeを採用したウェアの作り方は?医療機器として提供しないということだが、これは技術的なハードルか、それとも許認可の問題なのか。
・東レ 桑原:
今は刺繍と縫製の中間のような形でウェアを作っているが、将来的にはカットを縫製するだけ・プリントするといったやり方も考えています。
・NTT 村瀬:
精度としては医療機器に負けないものを実現しているが、薬事法などの許認可もあるため、医療機器としての提供には時間がかかります。
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