大画面化だけでなく、キャリアアグリゲーションやAXGP・WiMAX 2+への対応など、ネットワーク周りも大きく進化したiPhone 6。
携帯電話にとって最も重要なつながりやすさや通信速度、通信の安定性が大きく向上することが期待できる中、ソフトバンクの一人負けが深まりかねない事態に陥っていることが明らかになりました。
◆すでに1年前から旗色が悪かったソフトバンク
まず最初に知っておくべきなのは、昨年9月に発売されたiPhone 5s/5cの時点でソフトバンクのみがLTEネットワークで圧倒的に不利だったという部分。
iPhone 5s/5cは建物の中などでもつながりやすく、エリアの広い「プラチナバンドLTE(800~900MHz帯)」に対応しましたが、KDDIが昨年8月時点で該当する基地局を3.1万局、NTTドコモが2000局を展開していたのに対し、0局だったソフトバンクは大きく出鼻を挫かれました。
その後ソフトバンクは2013年冬~2014年春モデル発表会において、900MHz帯のプラチナバンドを用いたLTEの展開を2014年春に前倒しすることを告知。しかし本来提供開始される予定だった今年7月を過ぎ、iPhone 6発表を迎えてもなお正式アナウンスが行われないなど、立ち上げに苦戦しているのが現状です。
一方でプラチナバンドLTEで先行していたauは人口カバー率を99%まで引き上げ、残る2.1GHz帯LTEについても整備を急ピッチで進めており、NTTドコモも800MHz・1.5GHz(iPhone 6は非対応)・1.7GHz・2.1GHzの4つの周波数帯を使った「クアッドバンドLTE」の整備を推進中。
つまりプラチナバンドLTEの全国展開を行っていないソフトバンクは、大手携帯3社で唯一いまだに建物の中などで高速通信を利用しづらいという不利な状況に立たされ続けているわけです。
◆キャリアアグリゲーションでも出遅れるソフトバンク
そして今回、ソフトバンクにとってさらに厳しい事態となりそうなのが、2つのLTEを束ねて下り最大150Mbpsを実現するiPhone 6の新機能「キャリアアグリゲーション(CA)」への対応状況。
ソフトバンクがLTEでキャリアアグリゲーションを提供するのは2015年以降の予定。昨年に続き、またしても出遅れることになります。
なお、ソフトバンクは9月下旬からiPhone 6が対応するもう一つの高速通信方式「TD-LTE」と互換性を持つ「AXGP」で下り最大165Mbpsのキャリアアグリゲーションを展開する予定ですが、BUZZAP編集部で同社広報部に問い合わせたところ、iPhone 6でAXGPのCAを利用できるかどうかは未確認とのこと。
よしんば利用できたとしても、AXGPは建物の中に非常に弱く、基地局1台あたりのカバーエリアが狭い2.5GHz帯の電波を用いているため、プラチナバンドLTEをベースにしたキャリアアグリゲーションと異なり、つながりやすさや高速通信できるエリアの広さなどで遅れを取ることになります。
◆VoLTEと切り離せないCA、auは悲願の通話中データ送受信解禁
プラチナバンドLTE、キャリアアグリゲーションの対応状況……と、厳しい戦いを強いられるソフトバンクですが、極めつけとなるのが、NTTドコモが2014年夏モデルから提供開始した新サービス「VoLTE(Voice over LTE)」。
同サービスは音声をパケット化し、LTEネットワークでやりとりすることで、従来の3G回線よりもクリアで聞き取りやすい通話を実現するもので、au・ソフトバンクも冬をメドに導入する方針を表明しています。
VoLTEの高音質さがよく分かるムービー – YouTube
VoLTEでは通話・データ通信双方にLTEを用いるため、au版iPhoneの弱点だった「通話しながらのデータ通信」が可能に。
VoLTEで実現する高速マルチアクセス – YouTube
ビデオ通話もキレイになります。
高品質なビデオコールもVoLTEで実現 – YouTube
このようにいいことずくめなVoLTEですが、非常に大きな役割を果たすのがLTEネットワークの安定性。
一般的に基地局の境目などでは通信が不安定になりがちで、VoLTEの場合、最悪通話が途切れてしまう可能性もあるわけですが、前述のキャリアアグリゲーションを用いれば、どちらかの電波が弱くなっても、もう一つの電波で補完できるなど、通信が大幅に安定するようになります。
つまりauやドコモのネットワークでは、プラチナバンドLTEとキャリアアグリゲーションに裏打ちされた快適なVoLTEを利用できる一方で、ソフトバンクのVoLTEは他社と比較して移動中に途切れたり、音質が乱高下してしまう可能性があるわけです。
同じ端末、ほぼ同じ料金、そして見かけ上ほぼ同じに見える新サービス……と、一見して違いを見いだすのが困難な携帯各社のiPhone商戦。しかしながら実態が大きく異なるケースがあるため、選ぶ際には注意したほうが良さそうです。